真っ白な世界
道がない
予想していたよりも
雪が積もっている
家を出る時間が
早いので
自分よりも先に
歩いている足跡がない
いつも通る広い駐車場も
除雪車が待機していて
除雪が終わっていないので
雪が深く
危険なので通ることができない
ひとシーズンに
それほどないことだが
気持ち的には
疲労感が増す
歩道と車道の間は
ところどころが
雪山のごとく
雪が高くなっており
超えるのが大変だ
ブーツではないので
足首に雪が付き
溶けて靴下が濡れていく
雪が降っていても
風が強いときは
傘を差さず
フードをかぶり
マフラーをして防寒するが
全身真っ白になり
一定の間隔で
全身の雪を払う
払いきることができなかった
マフラーの雪が吐息で
溶けて首から
冷たいしずくが入る
歩いているので体が温まっているから
寒さはそれほど感じない
雪よりも風
風が強いので
地吹雪が起こり
なおかつ
雪が降っていれば
ホワイトアウトになる
風が強く
向かい風だと
なおさら前が見づらく
下ばかり見てしまう
前も下も
真っ白なので
段差もわかりにくく
歩きにくい
自分も世界も
真っ白になり
別の世界に行ったような
感覚になる
帰り道なら暗いので
街灯がぼんやり灯り
一つ先の
信号も見えにくい
自分のことを他人が
認識していないことがある
かもしれないので
事故に遭わないように
しなければならない
知らないところなら
不安になるだろう
静かな世界に浸ることができる
少し怖い感じもするが
いつもの歩き慣れた
道なら
白銀の世界と緊張感があり
非日常を感じられる
わざわざホワイトアウトの時に
家から出ることはないので
特別な世界をひとりで存分に
味わいながら
家を目指す
日常の中の
一瞬の別世界だから
良いのだと思う